王滝村での復元活動のいきさつ

 
2001年9月20日


 
・はじめに
 長野県木曾郡王滝村の教育委員会と東京の鉄道愛好家の有志団体では、村内に点在する木曽森林鉄道の車両を復元・保存する活動を平成3年より開始し、現在までに2両を復活させています。以下これまでの経緯について簡単にご報告します。
・保存活動の始まり
 王滝村では昭和50年に廃止した木曾森林鉄道で活躍していた車両達を、数カ所に分散して展示保存していました。しかし、貴重な産業遺産であるにもかかわらず、全国に散在する他の多くの保存車両と同様に充分なメンテナンスが行われているとは言い難い状況でした。

 
1985年当時の松原スポーツ公園


 私共のグループはこれに心を痛め、車両等の管理者である教育委員会に対し復元活動を行いたい旨の申し出を行い、同委員会の賛同・支援を得て平成3年より復元活動を開始しました。
・現在の状況

 
132号機関車の復元前と現在の姿


 現在までに酒井工作所(現酒井重工業)製5tディーゼル機関車132号機、同じく酒井工作所製1.5tモーターカー4号機を運転可能なレベルまで復元し動態保存しており、今後もこれらのメンテナンスおよび他の車両の復元整備を行う予定です。

 
4号モーターカーの復元前と現在の姿


 この活動は、同村内松原地区のスポーツ公園に保存展示されていた場所に仮機関庫を設置し、ここを拠点としていました。しかし、同公園が昭和59年に発生した長野県中部地震の復旧事業の一環である「牧尾ダム浚渫工事」により発生する堆砂の処分地に決定したため、移転を余儀なくされました。

 新たな活動拠点としていくつかの候補地がありましたが、検討の結果森林鉄道の旧田島駅構内を新たな活動拠点とすることになりました。新たな機関庫は平成12年9月に落成し、スポーツ公園で保存されていた車両の移転も完了しました。

 25年前に森林鉄道の廃止式典が行われた田島駅構内に再びレールが敷設されたことは、当時を知る村民の方々にとっても、また古くからの鉄道ファンである私共にとっても感慨深いものがあります。機関車のエンジンをかけホーンを吹鳴すると、静まり返った村内にこだまが響きわたり、目を閉じると現役当時の姿が甦ります。
・たくさんの方の協力で成り立っています
 私共のメンバーはほとんどが東京周辺に在住しており、村内での活動は年に数回程度しか行えないのが現状です。その中でも、文化の日を中心に行われる王滝村公民館祭り(村民文化祭)では、イベントのひとつとして復元車両の体験試乗会を毎年行っています。なつかしい森林鉄道の車両に乗り往時を思い出される方、子供たちに村の歴史のひとつを教えられる方、それぞれの立場で村の貴重な産業遺産を体験していただいています。

 
公民館祭り(村民文化祭)の様子


 なお、これらの車両の復元に際しては、車両・部品メーカーのOBの方を始め多くの方々に多大な御指導、ご支援を賜りましたことをご報告させていただくと共に、この場をお借りして厚く御礼申し上げたいと存じます。
・HPで公表するに至った理由
 従来、この復元・保存活動につきましては、悪戯防止等の観点から詳しい情報の発信を控えていました。しかし、インターネット等の急速な発達により、私共の知らない間に情報だけが勝手にひとり歩きするようになったことから、活動10周年の意味も込めて、皆様に積極的に活動内容をご報告することにしたものです。なお、今まで私共の活動の秘守にご協力いただいた方々にも、改めて御礼申し上げます。


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